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ねもころに片思ひすれかこのころの
我が心どの生けるともなき

歌の意味
心を込めてひたすら片思いをしているからか、このごろの私の心は、生きている心地もしない。
鑑賞
巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2525

詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
 ひたむきに片思いをしているからだろうか、このごろの私の心は生きている心地もしないと、報われない恋のつらさを詠んだ歌である。自分の心の衰えを、片思いのせいかと自問する形で見つめており、恋に心をすり減らした者の嘆きが率直に表れている。
 心の思いをそのまま述べる正述心緒の歌である。前歌までの、噂や外に表れる色をめぐる歌から、本歌では自分ひとりの片思いの内面へと目が向けられている。
 作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。

 初句「ねもころに」は、心を込めて、ひたすらに、の意である。片思いの思いの深さを示している。
 二句「片思ひすれか」は、片思いをしているからか、の意である。「すれ」は動詞「す」の已然形で、助詞「か」が付いて原因を推し量る疑問条件を表す。係助詞「か」は結句の「なき」と係り結びをなしている。
 三句「このころの」は、このごろの、の意である。いまの心の状態に目を向けている。
 四句「我が心どの」は、私の心が、の意である。「心ど」はしっかりした心、気力のことで、助詞「の」が主語を示している。
 結句「生けるともなき」は、生きているとも思えない、の意である。二句の係助詞「か」を受けて形容詞「なし」の連体形「なき」で結び、気力の失せた心を嘆いている。

かたもひ:片思い
こころど:しっかりした心、気力
出典
万葉集
前の歌
我が背子に直に逢はばこそ名は立ため 言の通ひに何かそこゆゑ
次の歌
待つらむに至らば妹が嬉しみと 笑まむ姿を行きて早見む