さ寝ぬ夜は千夜もありとも我が背子が
思ひ悔ゆべき心は持たじ
- 歌の意味
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共に寝ない夜が千夜あったとしても、あなたが思い悔やむことになるような心は持つまい。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2528
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
たとえ共寝のない夜が千夜続いても、あなたが私を思ったことを悔やむような心変わりは決してしないと誓う、女の恋の歌である。逢えない夜の長さを「千夜」と大きく言い、それでも揺るがない心の固さを、物にことよせずまっすぐに述べている。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「さ寝ぬ夜は」は、共寝をしない夜は、の意である。「さ」は語調を整える接頭語で、係助詞「は」が逢えない夜を取り立てている。
二句「千夜もありとも」は、千夜あったとしても、の意である。「とも」は逆接の仮定条件を表し、「千夜」という誇張で逢えない日々の長さを強調している。
三句「我が背子が」は、私のいとしいあなたが、の意である。「背子」は女性が夫や恋人を親しんで呼ぶ語で、女の立場の歌であることを示す。
四句「思ひ悔ゆべき」は、思い悔やむに違いない、の意である。助動詞「べし」の連体形で結句の「心」にかかり、あなたに後悔させるような心、という意味を作っている。
結句「心は持たじ」は、心は持つまい、の意である。打消意志の助動詞「じ」で強く言い切り、変わらぬ心を誓っている。
さぬ:共寝をする。「さ」は接頭語
せこ:女性が夫や恋人を親しんで呼ぶ語
くゆ:後悔する
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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誰れぞこの我が宿来呼ぶたらちねの 母に嘖はえ物思ふ我れを
- 次の歌
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家人は道もしみみに通へども 我が待つ妹が使来ぬかも