おほならば誰が見むとかもぬばたまの
我が黒髪を靡けて居らむ
- 歌の意味
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通り一遍の思いならば、誰が見るだろうと思って、(ぬばたまの)私の黒髪を靡かせていようか。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2532
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
いい加減な気持ちであるならば、誰に見られると思ってこの黒髪を靡かせていようかと、黒髪を靡かせているのはほかならぬあなたのためだという思いを反語で述べた、女の恋の歌である。黒髪という女の美しさの象徴に、相手への深い思いを託している。
初句の「おほならば」は、本巻の第二千五百三十五首の初句「おほろかの」と同じく、いい加減な心をいう語を打ち消して真心を示す趣向であり、近い位置で響き合っている。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「おほならば」は、通り一遍であるならば、いい加減な気持ちならば、の意である。「おほなり」の未然形に「ば」が付いた仮定条件である。
二句「誰が見むとかも」は、誰が見るだろうと思って、の意である。係助詞「か」は反語を表し、結句の「居らむ」で結ばれる。「も」は詠嘆の助詞である。
三句「ぬばたまの」は「黒」にかかる枕詞で、ここでは「黒髪」を導いている。
四句「我が黒髪を」は、私の黒髪を、の意である。
結句「靡けて居らむ」は、靡かせていようか、の意である。「靡く」はここでは下二段活用の他動詞で靡かせる意、推量の助動詞「む」の連体形が二句の「か」の結びとなっている。
なびく:ここでは下二段活用で、なびかせる意
ぬばたま:ヒオウギの実。黒く丸いことから「黒」「夜」などにかかる枕詞となる
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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我が背子がその名告らじとたまきはる 命は捨てつ忘れたまふな
- 次の歌
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面忘れいかなる人のするものぞ 我れはしかねつ継ぎてし思へば