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相思はぬ人のゆゑにかあらたまの
年の緒長く我が恋ひ居らむ

歌の意味
思い返してもくれない人のために、(あらたまの)年月を長く、私は恋い続けているのだろうか。
鑑賞
巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2534

詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
 自分を思ってくれない人のために、長い年月を恋い続けている自分を顧みて嘆いた、片思いの恋の歌である。報われない恋と知りながらも思いを断ち切れない心を、自らに問いかける形で述べている。
 本巻の第二千五百三十首と同じく枕詞「あらたまの」を用いるが、本歌では通例どおり「年」にかかる。また「年の緒」は、第二千五百三十六首の「息の緒」と同じく、長く続くものを緒に喩えた語であり、近い位置で呼応している。
 作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。

 初句「相思はぬ」は、互いに思い合わない、こちらを思ってくれない、の意である。六音の字余りである。
 二句「人のゆゑにか」は、人のために…か、の意である。係助詞「か」は疑問を表し、結句の「居らむ」で結ばれる。
 三句「あらたまの」は「年」にかかる枕詞である。
 四句「年の緒長く」は、年月を長く、の意である。「年の緒」は、年月が長く続くことを緒に喩えた語である。
 結句「我が恋ひ居らむ」は、私は恋い続けているのだろうか、の意である。推量の助動詞「む」の連体形が二句の「か」の結びとなり、自らを省みる嘆きを表している。

としのを:年月が長く続くことを緒(ひも)に喩えた語
あらたま:掘り出したままでまだ磨かれていない玉。「あらたまの」は「年」「月」などにかかる枕詞となる
出典
万葉集
前の歌
面忘れいかなる人のするものぞ 我れはしかねつ継ぎてし思へば
次の歌
おほろかの心は思はじ我がゆゑに 人に言痛く言はれしものを