息の緒に妹をし思へば年月の
行くらむ別も思ほえぬかも
- 歌の意味
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命の限りに妻を思っているので、年月が過ぎてゆくけじめもわからないことだ。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2536
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
命をかけて妻を思い続けているので、年月が過ぎてゆく区別さえわからなくなったと述べた、男の恋の歌である。恋に心を奪われて時の流れも忘れてしまうほどの思いの深さを、率直に言い表している。
初句の「息の緒」は、本巻の第二千五百三十四首の「年の緒」と同じく、長く続くものを緒に喩えた語であり、そちらが恋い続ける年月の長さを嘆くのに対し、本歌は思いの深さゆえに年月の区別も失うと歌っている。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「息の緒に」は、命がけで、命の限り、の意である。「息の緒」は息が長く続くことを緒に喩えた語で、命を表す。
二句「妹をし思へば」は、妻を思っているので、の意である。「し」は強意の助詞、「ば」は已然形に付く確定条件である。
三句「年月の」は、年月が、の意である。
四句「行くらむ別も」は、過ぎてゆくであろうけじめも、の意である。「らむ」は現在推量の助動詞、「別」は区別、けじめである。
結句「思ほえぬかも」は、わからないことだ、の意である。「思ほゆ」は自然に思われる意で、打消の「ぬ」と詠嘆の「かも」が付き、時の過ぎゆくのにも気づかぬほどの恋を嘆じている。
いきのを:命。息が長く続くことを緒に喩えた語
わき:区別、けじめ
おもほゆ:自然に思われる、感じられる
- 出典
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万葉集
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おほろかの心は思はじ我がゆゑに 人に言痛く言はれしものを
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たらちねの母に知らえず我が持てる 心はよしゑ君がまにまに