古典和歌stream

相見ては千年やいぬるいなをかも
我れやしか思ふ君待ちかてに

歌の意味
逢ってから千年もたったのだろうか。いや、そうではないのか。私がそう思うだけなのか。あなたを待ちかねて。
鑑賞
巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2539

詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
 逢ってから千年もたったのか、それとも待ちかねる私がそう思うだけなのかと、自問自答を重ねて待つ時間の長さを歌った、恋の歌である。わずかな日数を千年にも感じる焦燥を、問いを重ねる口調そのものに表している。
 本巻の第二千五百二十八首は逢えない夜を「千夜」と言い、本歌は逢わずにいる時を「千年」と言う。逢えない時間の長さを、一方は夜の数で、一方は年の数で誇張しており、同じ思いを別の尺度で詠んでいる。
 作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。

 初句「相見ては」は、逢ってから後、の意である。
 二句「千年やいぬる」は、千年が過ぎ去ったのだろうか、の意である。係助詞「や」は疑問を表し、連体形「いぬる」で結ばれる。ここで句切れとなる。
 三句「いなをかも」は、いや、そうではないのか、の意である。打ち消しの「いな」に助詞が付き、直前の問いを自ら打ち消している。
 四句「我れやしか思ふ」は、私がそう思うだけなのか、の意である。係助詞「や」の疑問を連体形「思ふ」で結び、ここでも句切れとなる。
 結句「君待ちかてに」は、あなたを待ちかねて、の意である。「かてに」は、…することができずに、の意で、倒置によって問いを重ねた理由を最後に示している。

いぬ:去る、過ぎ去る
あひみる:男女が逢う、契りを結ぶ
出典
万葉集
前の歌
ひとり寝と薦朽ちめやも綾席 緒になるまでに君をし待たむ
次の歌
振分けの髪を短み青草を 髪にたくらむ妹をしぞ思ふ