誰ぞかれと問はば答へむすべをなみ
君が使を帰しやりつも
- 歌の意味
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「誰なのだ、あれは」と問われたら答えるすべがないので、あなたの使いを帰してしまったことだ。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2545
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
せっかく来た恋人の使いを、家の者に「誰だ、あれは」と問われたら答えようがないので、そのまま帰してしまったと悔やむ、女の恋の歌である。家人、とりわけ母の目をはばかる娘の恋のもどかしさと、使いを帰したあとの心残りとが率直に述べられている。
初句の「誰ぞ」は本巻の第二千五百二十七首の初句「誰れぞこの」と通い、家の中で人の目をはばかる恋という点でも対応している。また四句「君が使を」は第二千五百四十三首の四句と同じ句であり、使いを待ちかねる歌の近くに、来た使いを帰してしまう歌が置かれている。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「誰ぞかれと」は、誰なのだ、あれは、と、の意である。「かれ」は遠くの人や物を指す語で、家の者が見とがめて問う言葉を想定している。
二句「問はば答へむ」は、問われたら答えるであろう、の意である。未然形に付く「ば」は仮定条件、「む」は連体形で三句の「すべ」にかかる。
三句「すべをなみ」は、手段がないので、の意である。「…を…み」は原因や理由を表す語法である。
四句「君が使を」は、あなたからの使いを、の意である。
結句「帰しやりつも」は、帰してしまったことだ、の意である。「つ」は完了の助動詞、「も」は詠嘆の助詞で、悔いの気持ちを込めて歌い収めている。
すべ:手段、方法
つかひ:恋人の間で便りを伝える使者
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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うつつには逢ふよしもなし夢にだに 間なく見え君恋ひに死ぬべし
- 次の歌
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思はぬに至らば妹が嬉しみと 笑まむ眉引き思ほゆるかも