- 歌の意味
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妻を恋しく思って私が泣く涙は、木の枕をしみ通って、袖までも濡れてしまった。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2549
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
妻を恋しく思って流す涙が、木の枕にしみ通り、袖までも濡らしてしまったと、独り寝の夜の悲しみを詠んだ歌である。涙が固い木の枕を通るという誇張によって、尽きることのない恋の涙の量を印象深く表している。
なお原文には「或本歌曰 枕通りてまけば寒しも」という異伝が注記されている。異伝では下の句が、枕を通って、それを枕にすると冷たいことよ、となり、濡れた枕の冷たさに独り寝のわびしさを感じ取る形になる。ここでは本文の「木枕通り袖さへ濡れぬ」を採ったのである。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「妹に恋ひ」は、妻を恋しく思って、の意である。「妹」は男性が妻や恋人を親しんで呼ぶ語で、男の立場の恋の歌であることを示している。
二句「我が泣く涙」は、私が泣いて流す涙、の意で、一首の主題となる涙を示している。
三句「敷栲の」は、寝床に敷く布の意から「枕」や「床」「袖」にかかる枕詞で、ここでは「木枕」を導いている。
四句「木枕通り」は、木で作った枕をしみ通って、の意である。固い木の枕まで涙が通るという誇張に、悲しみの深さが表れている。
結句「袖さへ濡れぬ」は、袖までも濡れてしまった、の意である。副助詞「さへ」が枕に加えて袖まで、という添加を表し、完了の助動詞「ぬ」で言い切っている。
しきたへ:寝床に敷く布の意。「敷栲の」の形で「枕」「床」「袖」などにかかる枕詞となる
こまくら:木で作った枕
- 出典
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万葉集
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かくだにも我れは恋ひなむ玉梓の 君が使を待ちやかねてむ
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立ちて思ひ居てもぞ思ふ紅の 赤裳裾引き去にし姿を