思ひにしあまりにしかばすべをなみ
出でてぞ行きしその門を見に
- 歌の意味
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思いがあまりにつのったので、どうしようもなくて、家を出て行ったのだ。あの人の家の門を見に。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2551
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
恋しさがあふれてどうにもならず、せめて恋人の家の門だけでも見ようと出かけて行ったと詠んだ歌である。逢うことはかなわなくとも、相手の住まいの門を見るだけで心を慰めようとする、ひたむきでいじらしい恋心が表れている。
三句「すべをなみ」は本巻の第二千五百四十五首にも見え、次歌の結句にも「すべの知らなく」とある。恋のためにどうしようもなくなった心を述べる歌が続けて並べられているのである。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「思ひにし」は、思いがつのって、の意である。完了の助動詞「ぬ」の連用形「に」に過去の助動詞「き」の連体形「し」が付いた形で、思いが積もった経緯を表している。
二句「あまりにしかば」は、度を越してしまったので、の意である。動詞「あまる」に完了と過去の助動詞が付き、「ば」で順接の確定条件を表している。
三句「すべをなみ」は、どうしようもないので、の意である。形容詞の語幹に「み」が付いて原因や理由を表す、いわゆるミ語法である。
四句「出でてぞ行きし」は、家を出て行ったのだ、の意である。係助詞「ぞ」を受けて結びは過去の助動詞「き」の連体形「し」となる係り結びで、ここで切れる四句切れである。
結句「その門を見に」は、あの人の家の門を見に、の意である。四句と倒置になっており、出かけた目的を最後に示すことで、門を見るだけでもという切ない思いを印象づけている。
すべ:物事を行う手段、方法
かど:家の門、門口
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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立ちて思ひ居てもぞ思ふ紅の 赤裳裾引き去にし姿を
- 次の歌
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心には千重しくしくに思へども 使を遣らむすべの知らなく