朝戸を早くな開けそあぢさはふ
目が欲る君が今夜来ませる
- 歌の意味
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朝の戸を早く開けないでおくれ。逢いたいと願っていたあなたが、今夜はいらしているのだから。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2555
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
朝の戸を早く開けないでほしいと願い、待ち焦がれていた恋人が今夜は来てくれているのだからと詠んだ歌である。久しぶりの逢瀬の夜が少しでも長く続くことを願う、女性の切実な思いが表れている。
上の句で朝戸を開けるなと禁止し、下の句でその理由を述べる構成である。夜明けは恋人が帰っていく時であり、朝戸を開けることはその別れを意味する。待ち望んだ人と過ごす夜を惜しむ気持ちが、簡潔な言葉に込められているのである。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「朝戸を」は、朝に開ける戸を、の意である。四音で一音少ない字足らずの句である。
二句「早くな開けそ」は、早く開けないでおくれ、の意である。「な〜そ」は禁止を表す形で、ここで切れる二句切れである。
三句「あぢさはふ」は「目」にかかる枕詞である。語義やかかり方には諸説があり、定説を見ない。
四句「目が欲る君が」は、逢いたいと願っていたあなたが、の意である。「目」は見ることや逢うことをいい、「欲る」はほしいと思う意である。
結句「今夜来ませる」は、今夜いらしている、の意である。「ませ」は尊敬の補助動詞「ます」、「る」は存続の助動詞「り」の連体形で、連体形で言い止めて詠嘆を込めている。
あさと:朝に開ける戸
ほる:ほしいと思う、願う
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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相見ては面隠さゆるものからに 継ぎて見まくの欲しき君かも
- 次の歌
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玉垂の小簾の垂簾を行きかちに 寐は寝さずとも君は通はせ