玉垂の小簾の垂簾を行きかちに
寐は寝さずとも君は通はせ
- 歌の意味
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玉垂の小簾の垂れ簾をくぐって行き来するだけで、共寝はしなくても、あなたは通ってきてほしい。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2556
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
共寝はできなくても、せめて簾の垂れた家に通ってきてほしいと恋人に願う歌である。逢瀬に障りのある事情のなかで、たとえわずかでも相手の訪れを求める女性の思いが込められている。
三句の「行きかちに」は原文に「徃褐」とあり、その読みと意味については古来諸説があって定説を見ない。ここでは簾をくぐって行き来する意に解したが、異なる解釈もあることに注意したい歌である。初句から三句までは家の入口に垂れた簾の様子を描き、下の句で率直な願いを述べる構成である。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「玉垂の」は、玉を緒に通して垂らす意から「小簾」の「を」にかかる枕詞である。
二句「小簾の垂簾を」は、小さな簾の垂れた簾を、の意である。「小簾」は簾の美称で、恋人の家の入口の様子を表している。
三句「行きかちに」は、原文の「徃褐」の読みと意味に諸説があり、行き来するばかりで、の意に解する説などがある。
四句「寐は寝さずとも」は、共寝はなさらなくても、の意である。「寐」は眠ること、「寝さ」は「寝」の尊敬の形で、接続助詞「とも」が逆接の仮定を表している。
結句「君は通はせ」は、あなたは通ってきてほしい、の意である。「通はせ」は「通ふ」に尊敬の助動詞「す」が付いた命令形で、相手への願いを強く表している。
をす:簾の美称
い:眠ること、睡眠
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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朝戸を早くな開けそあぢさはふ 目が欲る君が今夜来ませる
- 次の歌
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たらちねの母に申さば君も我れも 逢ふとはなしに年ぞ経ぬべき