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愛しと思へりけらしな忘れと
結びし紐の解くらく思へば

歌の意味
あの人は私をいとしいと思っていたらしい。「忘れるな」と言って結んだ紐が解けることを思うと。
鑑賞
巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2558

詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
 「忘れるな」と言って結び合った紐が自然に解けるのを見て、あの人は私をいとしいと思ってくれていたらしいと推し量った歌である。紐が解けるのは相手に思われているしるしとする当時の俗信を背景に、恋人の心を確かめて喜ぶ気持ちが表れている。
 万葉集には、別れの際に互いの衣の紐を結び合い、再会まで解かないことを誓う習わしがしばしば詠まれる。本歌では、その紐がひとりでに解けることを恋人の思いのあらわれと受け止めており、上の句で結論を述べ、下の句でその根拠を示す倒置の構成となっているのである。
 作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。

 初句「愛しと」は、いとしいと、の意である。「愛し」は心からかわいく思う気持ちを表す語である。
 二句「思へりけらし」は、思っていたらしい、の意である。存続の助動詞「り」に、過去の事柄を根拠をもって推し量る助動詞「けらし」が付いた形で、ここで切れる二句切れである。
 三句「な忘れと」は、忘れるな、と言って、の意である。副詞「な」が禁止を表し、別れ際の言葉をそのまま引いている。
 四句「結びし紐の」は、結んだ紐が、の意である。過去の助動詞「き」の連体形「し」により、かつて結び合ったことを回想している。
 結句「解くらく思へば」は、解けることを思うと、の意である。「解くらく」は「解く」のク語法で、二句の推量の根拠を倒置によって最後に示している。

ひも:衣服を結び合わせる紐。男女が互いに結び合い再会を誓った
出典
万葉集
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たらちねの母に申さば君も我れも 逢ふとはなしに年ぞ経ぬべき
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