人もなき古りにし里にある人を
めぐくや君が恋に死なする
- 歌の意味
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人もいない古びてしまった里に住んでいる者を、いたわしくも、あなたは恋い死にさせるのか。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2560
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
人も訪れない寂れた里に暮らす私を、あなたは恋い死にさせるつもりなのかと、訪れのない恋人を恨む歌である。自分のことを「ある人」とよそよそしく言い表すことで、顧みられない身の寂しさと恨めしさをにじませている。
寂れた里の孤独と、来ない恋人を待つ恋の苦しみとが重ねられており、取り残された女性の嘆きがよく表れた恋の歌である。結句の「恋に死なする」は、恋の苦しさを命にかかわるものとして訴える万葉集の恋の歌に多い言い方である。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「人もなき」は、人もいない、の意で、訪れる人のない寂しい里の様子を表している。
二句「古りにし里に」は、古びてしまった里に、の意である。完了の助動詞「ぬ」と過去の助動詞「き」を重ねて、すっかり寂れた様子を表している。
三句「ある人を」は、住んでいる人を、の意である。自分のことを他人のように言い表している。
四句「めぐくや君が」は、いたわしくもあなたが、の意である。「めぐく」は形容詞「めぐし」の連用形で、係助詞「や」が疑問を表している。
結句「恋に死なする」は、恋い死にさせるのか、の意である。四句の係助詞「や」を受けて、使役の助動詞「す」の連体形「する」で結ぶ係り結びである。
ふる:古くなる、年を経て寂れる
- 出典
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万葉集
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昨日見て今日こそ隔て我妹子が ここだく継ぎて見まくし欲しも
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人言の繁き間守りて逢ふともや なほ我が上に言の繁けむ