人目守る君がまにまに我れさへに
早く起きつつ裳の裾濡れぬ
- 歌の意味
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人目をはばかるあなたの思うままに、私までも早く起きて、裳の裾が濡れてしまった。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2563
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
人目を気にして早朝に帰っていく恋人に合わせて、自分までも早く起き、見送るうちに裳の裾が濡れてしまったと詠んだ歌である。逢瀬の翌朝の別れを描いた後朝の歌であり、明け方の露に裾を濡らして恋人を見送る女性の姿が浮かぶ。
人目を避けねばならない恋の不自由さを、相手に従う女性の側から詠んでいる。前々歌の第二千五百六十一首の「繁き間守りて」と本歌の「人目守る」とは同じ「守る」の語を用いており、世間の目をうかがう恋の歌が続いているのである。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「人目守る」は、人目をうかがう、の意である。「守る」は様子を見張ることで、人に見られないよう気を配る恋人の態度を表している。
二句「君がまにまに」は、あなたの思うままに、の意である。「まにまに」は他の意向に従うさまをいう。
三句「我れさへに」は、私までも、の意である。副助詞「さへ」が添加を表し、恋人だけでなく自分も、という思いを示している。
四句「早く起きつつ」は、早く起きて、の意である。接続助詞「つつ」が動作の継続を表し、明け方に起きて見送る様子を描いている。
結句「裳の裾濡れぬ」は、裳の裾が濡れてしまった、の意である。完了の助動詞「ぬ」で言い切り、恋人を送り出したあとの名残を表している。
まもる:じっと見張る、様子をうかがう
も:女性が腰から下にまとった衣
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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里人の言寄せ妻を荒垣の 外にや我が見む憎くあらなくに
- 次の歌
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ぬばたまの妹が黒髪今夜もか 我がなき床に靡けて寝らむ