花ぐはし葦垣越しにただ一目
相見し子ゆゑ千たび嘆きつ
- 歌の意味
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葦垣越しにただ一目見ただけの娘のために、私は千度も嘆いたことだ。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2565
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
葦垣越しにたった一目見ただけの娘のために、千度も嘆いたと詠んだ歌である。垣根越しに垣間見た相手に心を奪われ、それきり逢えずに思い悩む男の恋心が表れている。
「ただ一目」と「千たび」とを対比させ、わずかな出会いが果てしない嘆きを生んだことを数の対照によって印象づけている。垣根越しに女性を見初めることは古代の恋の始まりの一つの形であり、本歌はその一瞬から生まれた恋の苦しみを詠んでいるのである。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「花ぐはし」は、花が美しい意で、「葦」にかかる枕詞である。
二句「葦垣越しに」は、葦で作った垣根を隔てて、の意である。垣根越しに相手を見た状況を示している。
三句「ただ一目」は、ほんの一目だけ、の意で、結句の「千たび」と対比されている。
四句「相見し子ゆゑ」は、見かけた娘のために、の意である。「子」は女性を親しんで呼ぶ語で、「ゆゑ」は原因や理由を表している。
結句「千たび嘆きつ」は、千度も嘆いたことだ、の意である。完了の助動詞「つ」で言い切り、三句の「ただ一目」との対照で嘆きの深さを強調している。
はなぐはし:花が美しい意。「葦」にかかる枕詞
あしかき:葦を編んで作った垣根
- 出典
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万葉集
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ぬばたまの妹が黒髪今夜もか 我がなき床に靡けて寝らむ
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色に出でて恋ひば人見て知りぬべし 心のうちの隠り妻はも