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かくのみし恋ひば死ぬべみたらちねの
母にも告げずやまず通はせ

歌の意味
このようにばかり恋い続けていたら死んでしまいそうなので、母にも告げずに、絶えず通って来てほしい。
鑑賞
巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2570

詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
 このまま恋い続けるだけでは死んでしまいそうだから、母にも知らせずに、絶えず通って来てほしいと、恋人に訴えた女性の歌である。娘の恋を見守り時に妨げる母の存在をはばかりつつ、それでも逢いたいという切実な思いを率直に述べている。
 心の思いを直接述べる「正に心緒を述ぶ」の一首である。母に隠れて恋をする娘の姿は、万葉集巻第十一の恋の歌にたびたび現れる。なお漢字原文は「母毛告都」とあり、「母にも告げつ」と訓んで、母にも打ち明けたのだから絶えず通って来てほしいと解する説もあるが、ここでは本文の訓読に従う。
 作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。

 初句「かくのみし」は、このようにばかり、の意である。「し」は強めの助詞で、今の恋の苦しさが続くことを指している。
 二句「恋ひば死ぬべみ」は、恋い続けたならば死んでしまいそうなので、の意である。「べみ」は助動詞「べし」の語幹に「み」が付いた形で、理由を表している。
 三句「たらちねの」は「母」にかかる枕詞である。
 四句「母にも告げず」は、母にも知らせずに、の意である。娘の結婚に母の承認が大きな意味をもった時代の事情がうかがえる句である。
 結句「やまず通はせ」は、絶えず通って来てほしい、の意である。「通はせ」は「通ふ」に尊敬の助動詞「す」が付いた命令形で、相手への願いを表している。

たらちね:母の意。「たらちねの」の形で「母」にかかる枕詞となる
かよふ:男が女のもとへ通う
出典
万葉集
前の歌
思ふらむその人なれやぬばたまの 夜ごとに君が夢にし見ゆる
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大夫は友の騒きに慰もる 心もあらむ我れぞ苦しき