めづらしき君を見むとこそ左手の
弓取る方の眉根掻きつれ
- 歌の意味
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めったに逢えないあなたに逢えるだろうと思ってこそ、左手の、弓を持つほうの眉を掻いたのだ。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2575
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
めったに逢えない恋人に逢えるのではないかと期待して、左手の、弓を持つ側の眉を掻いたと詠んだ歌である。眉がかゆくなるのは恋しい人に逢える前兆とする当時の俗信をふまえ、逢瀬を待ちわびる心を、眉を掻くというしぐさに託している。
心の思いを直接述べる「正に心緒を述ぶ」の一首である。眉を掻くことを恋人に逢う兆しとする歌は、本巻の第二千四百八首や第二千六百十四首にも見え、万葉集巻第十一の恋の歌に繰り返し現れる趣向である。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「めづらしき」は、めったにない、心ひかれる、の意である。なかなか逢えない恋人をいとしく思う気持ちが込められている。
二句「君を見むとこそ」は、あなたに逢えるだろうと思ってこそ、の意である。八音の字余りで、係助詞「こそ」が結句の已然形「つれ」と呼応する係り結びとなっている。
三句「左手の」は、左手の、の意である。続く四句で、それが弓を持つほうの手であることを言い添えている。
四句「弓取る方の」は、弓を持つ側の、の意である。弓は左手で持つことから、左側をこのように言い表している。
結句「眉根掻きつれ」は、眉を掻いたのだ、の意である。完了の助動詞「つ」の已然形「つれ」で、二句の「こそ」を受けて結んでいる。
まよね:眉、眉のあたり
- 出典
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万葉集
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面忘れだにもえすやと手握りて 打てども懲りず恋といふ奴
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人間守り葦垣越しに我妹子を 相見しからに言ぞさだ多き