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朝寝髪我れは梳らじうるはしき
君が手枕触れてしものを

歌の意味
朝の寝乱れた髪を、私は櫛でとかすまい。いとしいあなたの手枕に触れた髪なのだから。
鑑賞
巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2578

詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
 一夜をともにした翌朝、寝乱れた髪を櫛でとかすまいと詠んだ女性の歌である。いとしい人の腕を枕にして触れた髪だからこそ、そのままにしておきたいという思いに、別れた後もなお恋人のぬくもりを身にとどめたい心が表れている。
 心の思いを直接述べる「正に心緒を述ぶ」の一首で、逢瀬の翌朝の別れを詠んだ後朝の歌である。髪という身近なものを通して、女性の細やかな情愛を描いた歌として親しまれている。
 作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。

 初句「朝寝髪」は、朝起きたばかりの寝乱れた髪、の意である。二句の「梳らじ」の目的語にあたり、歌の主題を最初に示している。
 二句「我れは梳らじ」は、私は櫛でとかすまい、の意である。打消意志の助動詞「じ」で強い決意を表し、ここで句切れとなる二句切れである。下の句で理由を述べる倒置の構成となっている。
 三句「うるはしき」は、いとしい、すばらしい、の意で、四句の「君」を修飾している。
 四句「君が手枕」は、あなたの腕を枕にしたこと、の意である。共寝の記憶を具体的に示している。
 結句「触れてしものを」は、触れたものなのに、の意である。過去の助動詞「き」の連体形「し」に詠嘆を込めた「ものを」が付き、とかしたくない理由を余情をもって言い終えている。

あさねがみ:朝起きたばかりの寝乱れた髪
けづる:櫛で髪をとかす
たまくら:腕を枕とすること
出典
万葉集
前の歌
今だにも目な乏しめそ相見ずて 恋ひむ年月久しけまくに
次の歌
早行きていつしか君を相見むと 思ひし心今ぞなぎぬる