言に言へば耳にたやすし少なくも
心のうちに我が思はなくに
- 歌の意味
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言葉に出して言えば、耳にはたやすく聞こえる。けれども、わずかばかりに心の中で私が思っているのではないのに。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2581
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
思いを言葉に出してしまえば、聞く耳にはたやすいものとして響いてしまうが、心の中の思いは決して少しばかりのものではないと訴えた歌である。言葉では伝えきれない思いの深さと、それを軽く受け取られかねないもどかしさを述べている。
心の思いを直接述べる「正に心緒を述ぶ」の一首である。言葉と心の隔たりを主題としており、恋の思いを言い表すことの難しさそのものを詠んだ点に特色がある。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「言に言へば」は、言葉に出して言えば、の意である。「言へば」は已然形に「ば」が付いた確定条件で、言葉にしたときの常を述べている。
二句「耳にたやすし」は、耳にはたやすく聞こえる、の意である。言葉にすると軽く聞こえてしまうことをいい、ここで句切れとなる二句切れである。
三句「少なくも」は、わずかばかりにも、の意である。結句の打消と呼応して、決して少なくはないという意を強めている。
四句「心のうちに」は、心の中で、の意である。言葉に出す前の、内に秘めた思いを指している。
結句「我が思はなくに」は、私が思っているのではないのに、の意である。「なくに」は打消の助動詞「ず」のク語法に助詞「に」が付いた形で、詠嘆を込めて言い終えている。
こと:言葉
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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面形の忘るとあらばあづきなく 男じものや恋ひつつ居らむ
- 次の歌
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あづきなく何のたはこと今さらに 童言する老人にして