あづきなく何のたはこと今さらに
童言する老人にして
- 歌の意味
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情けないことに、何というたわごとか。今さら子どもじみたことを言うとは、老人の身でありながら。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2582
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
年老いた身でありながら、今さら子どものような恋の言葉を口にする自分を、何というたわごとかと嘲った歌である。老いてなお恋に心を動かす自分へのあきれと照れとが、自嘲の口ぶりに込められている。
心の思いを直接述べる「正に心緒を述ぶ」の一首である。二首前の本巻の第二千五百八十首と同じく「あづきなく」と歌い起こしており、ともに自らの恋のさまを情けなく思う気持ちを述べている。老人の恋を詠んだ歌として、万葉集巻第十一の恋の歌のなかでも異色の一首である。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「あづきなく」は、どうしようもなく、情けなく、の意である。本巻の第二千五百八十首の三句と同じ語で、自らを嘆く気持ちを歌の初めに示している。
二句「何のたはこと」は、何というたわごとか、の意である。自分の言葉をばかげたものとして突き放している。
三句「今さらに」は、今になって、の意である。年老いた今という時を強調している。
四句「童言する」は、子どもじみたことを言う、の意である。恋の言葉を幼いもののように見なしている。
結句「老人にして」は、老人の身でありながら、の意である。本来は「童言する」の前に置かれる内容を最後に回した倒置で、自嘲の思いを強めている。
たはこと:ばかげた言葉、たわごと
わらはごと:子どもじみた言葉
おいひと:年老いた人
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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言に言へば耳にたやすし少なくも 心のうちに我が思はなくに
- 次の歌
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相見ては幾久さにもあらなくに 年月のごと思ほゆるかも