かくしつつ我が待つ験あらぬかも
世の人皆の常にあらなくに
- 歌の意味
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こうして私が待っている甲斐があってほしいものだ。世の人は皆、いつまでも生きているわけではないのに。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2585
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
こうして待ち続けている甲斐があってほしいものだ、世の人は誰もがいつまでも生きていられるわけではないのだからと、恋人の訪れを待つ女性が詠んだ歌である。人の命の限りあることを思い、待つ時間の過ぎてゆく焦りを訴えている。
心の思いを直接述べる「正に心緒を述ぶ」の一首である。恋の待つ心に、世の無常を思う心を重ねている点に特色があり、限りある命だからこそ早く逢いたいという切実な願いが込められている。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「かくしつつ」は、こうしながら、の意である。「つつ」は反復、継続を表し、待ち続ける日々を示している。
二句「我が待つ験」は、私が待っている甲斐、の意である。「験」は、効き目、甲斐をいう。
三句「あらぬかも」は、あってくれないものか、の意である。打消の「ぬ」に「かも」が付いた形で、願望を表し、ここで句切れとなる三句切れである。
四句「世の人皆の」は、世の人はみな、の意である。自分も含めた人の世の定めに目を向けている。
結句「常にあらなくに」は、いつまでも変わらずにいるわけではないのに、の意である。「なくに」は打消の助動詞「ず」のク語法に「に」が付いた形で、詠嘆を込めて言い終えている。
しるし:効き目、甲斐
- 出典
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万葉集
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ますらをと思へる我れをかくばかり 恋せしむるは悪しくはありけり
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人言を繁みと君に玉梓の 使も遣らず忘ると思ふな