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人言を繁みと君に玉梓の
使も遣らず忘ると思ふな

歌の意味
人の噂がうるさいので、あなたに使いも送らずにいるが、忘れたと思わないでほしい。
鑑賞
巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2586

詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
 人の噂がうるさいので使いも送らずにいるが、決してあなたを忘れたわけではないと、恋人に弁明した歌である。世間の目をはばかって便りを控える苦しさと、変わらぬ思いを伝えたいという心とが述べられている。
 心の思いを直接述べる「正に心緒を述ぶ」の一首である。噂を気にして思うように逢えず、便りも出せないという恋の不自由さは、本巻の第二千五百七十六首の噂に悩む歌とも通じ、万葉集巻第十一の恋の歌に繰り返し現れる主題である。
 作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。

 初句「人言を」は、世間の人の噂を、の意である。恋を妨げるものとして、噂が歌の初めに示されている。
 二句「繁みと君に」は、うるさいので、あなたに、の意である。「繁み」は形容詞「繁し」の語幹に「み」が付いた形で、理由を表している。
 三句「玉梓の」は「使」にかかる枕詞である。使者が梓の杖を持ったことによるとされる。
 四句「使も遣らず」は、使いも送らずに、の意である。便りを届ける使者さえ出さずにいることをいう。
 結句「忘ると思ふな」は、忘れたと思わないでほしい、の意である。終助詞「な」は禁止を表し、相手への強い願いを込めている。

ひとごと:世間の人のうわさ
たまづさ:使者、手紙。「たまづさの」は「使」にかかる枕詞となる
出典
万葉集
前の歌
かくしつつ我が待つ験あらぬかも 世の人皆の常にあらなくに
次の歌
大原の古りにし里に妹を置きて 我れ寐ねかねつ夢に見えこそ