夕されば君来まさむと待ちし夜の
なごりぞ今も寐ねかてにする
- 歌の意味
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夕方になるとあなたがおいでになるだろうと待っていた夜の名残で、今も寝つけずにいる。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2588
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
夕方になるたびに恋人の訪れを待っていた夜々の習いが残り、相手が来なくなった今も眠れずにいると嘆いた女の歌である。待つ夜を重ねた日々が身にしみついてしまったという言い方に、通わなくなった男への恨みと未練がにじんでいる。
前歌の「我れ寐ねかねつ」を受けるように、本歌も眠れない夜を詠む。前歌が妻を離れて眠れない男の歌であるのに対し、本歌は男を待ち続けて眠れない女の歌であり、離れた側と待つ側の嘆きが並んでいる。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「夕されば」は、夕方になると、の意である。「されば」は動詞「さる」の已然形に「ば」が付いた形で、時が移ってその時になることを表している。
二句「君来まさむと」は、あなたがいらっしゃるだろうと、の意である。「来ます」は「来」に尊敬の「ます」が付いた語で、「む」は推量の助動詞である。
三句「待ちし夜の」は、待っていた夜の、の意である。過去の助動詞「き」の連体形「し」によって、待つ夜を重ねたかつての日々を振り返っている。
四句「なごりぞ今も」は、その名残で今も、の意である。係助詞「ぞ」が「なごり」を強く取り立て、結句の連体形で結ぶ係り結びとなっている。
結句「寐ねかてにする」は、寝つけずにいる、の意である。「かてに」は、できないの意の補助動詞「かつ」に打消の古い形「に」が付いたもので、「する」は四句の「ぞ」を受けた連体形の結びである。
なごり:物事が過ぎ去った後に残る気配や影響
いぬ:眠る、寝つく
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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大原の古りにし里に妹を置きて 我れ寐ねかねつ夢に見えこそ
- 次の歌
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相思はず君はあるらしぬばたまの 夢にも見えずうけひて寝れど