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人言の繁き間守ると逢はずあらば
つひにや子らが面忘れなむ

歌の意味
人の噂のうるさい間をうかがって逢わずにいたら、とうとうあの子は私の顔を忘れてしまうのだろうか。
鑑賞
巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2591

詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
 人の噂がうるさいので、それがおさまるのを待って逢わずにいたら、ついには恋人が自分の顔を忘れてしまうのではないかと案じた男の歌である。世間の目を気にして逢うのを控える慎重さと、逢わずにいることで心が離れてしまう不安との板挟みを詠んでいる。
 人の噂を憚って逢えない嘆きは、本巻の第二千五百八十六首の「人言を繁みと君に」にも見え、また人目を憚って様子をうかがうばかりの日々を嘆く第二千六百六首にも通じる。人の噂と人目に妨げられる恋は、万葉集巻第十一の恋の歌に繰り返し現れる主題である。
 作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。

 初句「人言の」は、人の噂の、の意である。「人言」は世間の人々のうわさで、恋を妨げるものとして詠まれる。
 二句「繁き間守ると」は、うわさの多い間をうかがうとして、の意である。「間守る」は機会や隙をうかがって待つことをいう。
 三句「逢はずあらば」は、逢わずにいたならば、の意である。未然形に「ば」が付いた仮定の条件を表している。
 四句「つひにや子らが」は、とうとうあの子が、の意である。係助詞「や」は疑問を表し、結句の「なむ」で結ぶ係り結びとなっている。「子ら」の「ら」は親しみを添える接尾語である。
 結句「面忘れなむ」は、顔を忘れてしまうだろうか、の意である。「なむ」は完了の助動詞「ぬ」の未然形に推量の助動詞「む」の連体形が付いたもので、四句の「や」を受けた結びである。

ひとごと:世間の人のうわさ
まもる:じっと見守って機会をうかがう
おもわする:人の顔を忘れる
出典
万葉集
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岩根踏み夜道は行かじと思へれど 妹によりては忍びかねつも
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恋死なむ後は何せむ我が命 生ける日にこそ見まく欲りすれ