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敷栲の枕響みて寐ねらえず
物思ふ今夜早も明けぬかも

歌の意味
枕が鳴り響いて眠ることができない。物思いをする今夜は、早く明けてくれないものか。
鑑賞
巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2593

詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
 恋の物思いに眠れず、枕が鳴り響くほどに寝返りを打ちながら、早く夜が明けてほしいと願った歌である。眠れない夜の長さとつらさを、枕の音という身近なものを通して具体的に描いている。
 前歌までに続いて眠れない夜を詠む歌である。本巻の第二千五百八十七首や第二千五百八十八首が眠れないことを述べたのに対し、本歌は一夜が早く過ぎることを願う形で、眠れない夜の苦しさを詠んでいる。
 作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。

 初句「敷栲の」は「枕」にかかる枕詞である。敷栲は寝床に敷く布の意で、枕や衣、袖などにかかる。
 二句「枕響みて」は、枕が鳴り響いて、の意である。寝返りを打つたびに枕が音を立てることと解するのが一般的であるが、本文の文字の解釈には諸説がある。
 三句「寐ねらえず」は、眠ることができない、の意である。「らえ」は可能の助動詞「らゆ」の未然形で、「ず」で打ち消している。ここで意味が切れる三句切れの歌である。
 四句「物思ふ今夜」は、物思いをする今夜、の意である。「物思ふ」は恋の悩みにふけることをいい、体言「今夜」で受けている。
 結句「早も明けぬかも」は、早く明けてくれないものか、の意である。「ぬかも」は打消の助動詞「ず」の連体形に助詞「かも」が付いたもので、願望を表している。八音の字余りの句である。

しきたへ:寝床に敷く布。「しきたへの」の形で枕、衣、袖などにかかる枕詞となる
とよむ:鳴り響く、音を立てる
ものもふ:物思いをする、恋に思い悩む
出典
万葉集
前の歌
恋死なむ後は何せむ我が命 生ける日にこそ見まく欲りすれ
次の歌
行かぬ我れを来むとか夜も門閉さず あはれ我妹子待ちつつあるらむ