いかにして忘れむものぞ我妹子に
恋はまされど忘らえなくに
- 歌の意味
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どのようにして忘れたらよいのか。いとしい妻への恋しさはつのるばかりで、忘れることもできないのに。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2597
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
忘れようとしても、いとしい人への恋しさはつのるばかりで忘れることができず、どうすれば忘れられるのかと途方に暮れた男の歌である。忘れたいのに忘れられないという恋の矛盾を、「忘る」の語を初めと終わりに重ねて率直に表している。
前歌の、恋が月ごと日ごとにつのるばかりだという嘆きを受けて、本歌もまさりゆく恋を詠み、そこから逃れようとして逃れられない心を述べている。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「いかにして」は、どのようにして、の意である。方法を問う形で、忘れる手立てのない苦しさを表している。
二句「忘れむものぞ」は、忘れたらよいのか、の意である。「ものぞ」は問いを強める言い方で、ここで意味が切れる二句切れの歌である。
三句「我妹子に」は、いとしい妻に、の意である。「我妹子」は男性が妻や恋人を親しんで呼ぶ語である。
四句「恋はまされど」は、恋はつのるけれども、の意である。「まさる」は程度が増すことをいい、接続助詞「ど」で逆接に続けている。
結句「忘らえなくに」は、忘れられないのに、の意である。「忘らえ」は四段動詞「忘る」の未然形に可能の助動詞「ゆ」の未然形が付いた形で、「なくに」は打消「ず」のク語法に「に」が付き、詠嘆を込めて結んでいる。二句の「忘れむ」と同じ語を重ねている。
わぎもこ:男性が妻や恋人を親しんで呼ぶ語
わする:忘れる
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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慰もる心はなしにかくのみし 恋ひやわたらむ月に日に異に
- 次の歌
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遠くあれど君にぞ恋ふる玉桙の 里人皆に我れ恋ひめやも