遠くあれど君にぞ恋ふる玉桙の
里人皆に我れ恋ひめやも
- 歌の意味
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遠く離れていても、あなたにこそ恋をしている。里の人の誰にでも、私が恋をするだろうか、決してそうではない。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2598
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
遠く離れていても恋しく思うのはあなただけであり、里の人誰にでも心を寄せるようなことはしないと、ひたむきな思いを訴えた女の歌である。相手の疑いを打ち消すように、自分の恋がただ一人に向けられていることを強く言い切っている。
前歌までが男の側の恋の苦しさを詠んだのに対し、本歌は女の側から変わらぬ思いを誓う形となっている。上の句で思いの向かう先を示し、下の句で反語によって他の人への思いを否定する、明快な構成の一首である。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「遠くあれど」は、遠く離れているけれども、の意である。五音に収まらない字余りの句で、二人の間の隔たりを最初に示している。
二句「君にぞ恋ふる」は、あなたにこそ恋している、の意である。係助詞「ぞ」が「君」を強く取り立て、連体形「恋ふる」で結ぶ係り結びとなっている。ここで意味が切れる二句切れの歌である。
三句「玉桙の」は、ふつう「道」にかかる枕詞であるが、ここでは道の通う「里」にかかっている。
四句「里人皆に」は、里の人みなに、の意である。身近な里の人々を、遠くの「君」と対比させている。
結句「我れ恋ひめやも」は、私が恋をするだろうか、いや決してしない、の意である。「めやも」は推量の助動詞「む」の已然形に「や」「も」が付いた反語の言い方で、二句の「恋ふる」と同じ語を重ねている。
たまほこ:玉で飾った矛。「たまほこの」の形で道や里にかかる枕詞となる
さとびと:同じ里に住む人
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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いかにして忘れむものぞ我妹子に 恋はまされど忘らえなくに
- 次の歌
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験なき恋をもするか夕されば 人の手まきて寝らむ子ゆゑに