験なき恋をもするか夕されば
人の手まきて寝らむ子ゆゑに
- 歌の意味
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甲斐のない恋をするものだなあ。夕方になれば、他の人の腕を枕にして寝ているだろうあの子のために。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2599
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
夕方になれば他の男の腕を枕にして寝ているであろう女を恋い慕い、甲斐のない恋をしていることだと自嘲した男の歌である。報われないとわかっていながら思いを断ち切れない、片思いのやるせなさを詠んでいる。
前歌が一人の相手だけを思い続ける女の誠実さを誓う歌であったのに対し、本歌は他の人のものになっている女を思い続ける男の歌であり、恋の思いの行き場が対照的である。「夕されば」は本巻の第二千五百八十八首と同じ句で、夜の訪れとともに恋の思いが強まる時を示している。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「験なき」は、甲斐のない、の意である。「験」は効き目や甲斐のことで、報われない恋であることを冒頭で言い切っている。
二句「恋をもするか」は、恋をすることよ、の意である。「か」は詠嘆の助詞で、ここで意味が切れる二句切れの歌である。下の句が二句の理由を示す倒置の構成となっている。
三句「夕されば」は、夕方になると、の意である。「されば」は動詞「さる」の已然形に「ば」が付いた形で、時が移ってその時になることを表している。
四句「人の手まきて」は、他の人の腕を枕にして、の意である。「まく」は腕などを枕にすることをいう。
結句「寝らむ子ゆゑに」は、寝ているだろう子のために、の意である。「らむ」は目の前にない現在の事柄を推量する助動詞で、「ゆゑに」は理由を表している。
しるし:効き目、甲斐
まく:腕などを枕にして寝る
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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遠くあれど君にぞ恋ふる玉桙の 里人皆に我れ恋ひめやも
- 次の歌
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百代しも千代しも生きてあらめやも 我が思ふ妹を置きて嘆かむ