うつつにも夢にも我れは思はずき
古りたる君にここに逢はむとは
- 歌の意味
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現実にも夢にも、私は思っていなかった。昔なじみのあなたに、ここで逢おうとは。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2601
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
思いがけない所で昔なじみの相手にめぐり逢った驚きと喜びを、現実でも夢でも思ってもみなかったと詠んだ女の歌である。久しく逢わなかった人との再会の感慨を、「うつつ」と「夢」を並べる誇張によって強く表している。
前歌までに夢を詠む歌が続いたのを受け、本歌も夢の語を用いるが、夢にさえ思わなかったことが現実に起こったという形で、夢と現実の対比を生かしている。「古りたる君」は古くからなじみのあなたと解するのが一般的であり、年を重ねたあなたとする説もある。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「うつつにも」は、現実にも、の意である。「うつつ」は目覚めている現実の世界をいい、次の「夢」と対をなしている。
二句「夢にも我れは」は、夢にも私は、の意である。初句の「にも」と同じ形を重ね、現実でも夢でもという強い否定を導いている。
三句「思はずき」は、思わなかった、の意である。「き」は過去の助動詞で、ここで意味が切れる三句切れの歌である。下の句がその内容を示す倒置の構成となっている。
四句「古りたる君に」は、昔なじみのあなたに、の意である。「古る」は年月を経ることで、久しく隔たっていた相手であることを表している。
結句「ここに逢はむとは」は、ここで逢おうとは、の意である。八音の字余りの句で、思いがけない再会の驚きを込めて一首を結んでいる。
うつつ:目覚めている現実の状態
ふる:年月を経て古くなる、年をとる
いめ:夢の古い形
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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百代しも千代しも生きてあらめやも 我が思ふ妹を置きて嘆かむ
- 次の歌
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黒髪の白髪までと結びてし 心ひとつを今解かめやも