心をし君に奉ると思へれば
よしこのころは恋ひつつをあらむ
- 歌の意味
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心をあなたに差し上げたと思っているので、ままよ、このごろは恋い続けていよう。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2603
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
心はすでにあなたに捧げてしまったと思っているので、逢えない苦しさがあっても、ままよ、このごろは恋い続けていようと、恋の苦しみを受け入れた女の歌である。思いどおりにならない恋を嘆くのではなく、覚悟を決めて耐えようとする心を詠んでいる。
前歌の「心ひとつを」に続き、本歌も「心」の語で始まり、一人の相手に心を捧げた女の思いを詠む。前歌が心を解かないという誓いであるのに対し、本歌は捧げた心のままに恋い続けようとする決意を述べている。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「心をし」は、心を、の意である。「し」は強意の副助詞で、大切な心をこそ、と強調している。
二句「君に奉ると」は、あなたに差し上げると、の意である。「奉る」は「与ふ」の謙譲語で、心を相手に捧げることを表している。
三句「思へれば」は、思っているので、の意である。「思へれ」は「思ふ」に存続の助動詞「り」の已然形が付いた形で、「ば」によって確定した理由を示している。
四句「よしこのころは」は、ままよ、このごろは、の意である。「よし」は不満ながら許容する気持ちを表す副詞で、あきらめを含んだ覚悟を示している。
結句「恋ひつつをあらむ」は、恋い続けていよう、の意である。「つつ」は継続、「を」は語調を強める間投助詞、「む」は意志の助動詞である。字余りの句である。
まつる:「与ふ」の謙譲語。差し上げる
このころ:近ごろ、このところ
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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黒髪の白髪までと結びてし 心ひとつを今解かめやも
- 次の歌
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思ひ出でて音には泣くともいちしろく 人の知るべく嘆かすなゆめ