玉桙の道行きぶりに思はぬに
妹を相見て恋ふるころかも
- 歌の意味
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道を行くついでに、思いがけずあの娘を見かけて、恋しく思うこのごろであることよ。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2605
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
道を行きずりに思いがけず美しい娘を見かけ、それ以来恋しく思うようになったと詠んだ男の歌である。ふとした出会いから恋が始まり、心を離れなくなった戸惑いを詠嘆を込めて述べている。
「玉桙の」は本巻の第二千五百九十八首にも見える枕詞で、そこでは「里」にかかるのに対し、本歌では本来の「道」にかかっている。前歌までの長く続く恋や秘めた恋の歌に対し、本歌は恋の始まりを詠んでいる。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「玉桙の」は「道」にかかる枕詞である。玉桙は玉で飾った矛の意とされ、道にかかる理由には諸説がある。
二句「道行きぶりに」は、道を行くついでに、の意である。「道行きぶり」は道を行きずりに、の意で、偶然の出会いであることを示している。
三句「思はぬに」は、思いがけず、の意である。予期していなかった出会いであったことを表している。
四句「妹を相見て」は、あの娘を見かけて、の意である。「相見る」は互いに見ることで、ここでは対面すること、出会うことをいう。
結句「恋ふるころかも」は、恋しく思うこのごろであることよ、の意である。「かも」は詠嘆の助詞で、出会い以来恋の思いが続いていることをしみじみと述べている。
たまほこ:玉で飾った矛。「たまほこの」の形で道にかかる枕詞となる
みちゆきぶり:道を行くついで、行きずり
あひみる:顔を合わせる、対面する
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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思ひ出でて音には泣くともいちしろく 人の知るべく嘆かすなゆめ
- 次の歌
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人目多み常かくのみしさもらはば いづれの時か我が恋ひずあらむ