人目多み常かくのみしさもらはば
いづれの時か我が恋ひずあらむ
- 歌の意味
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人目が多いからといって、いつもこのように様子をうかがってばかりいたら、いったいいつになったら私は恋に苦しまずにいられるのだろうか。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2606
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
人目が多いのを憚って、いつも機会をうかがってばかりいては、いつまでたっても恋の苦しみから逃れられないと嘆いた歌である。人目を避けて逢う機会を待つうちに、思いばかりが募ってゆくもどかしさを詠んでいる。
本巻の第二千五百九十一首も、人の噂の間をうかがって逢わずにいる不安を詠んでおり、「間守る」と本歌の「さもらふ」は、ともに機会をうかがって待つことを表す点で通じ合う。前歌の思いがけない出会いの歌に続き、本歌は逢う機会を得られない恋の苦しさを詠んでいる。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「人目多み」は、人目が多いので、の意である。形容詞の語幹に「み」が付いて理由を表す、いわゆるミ語法である。
二句「常かくのみし」は、いつもこのようにばかり、の意である。副助詞「のみ」に強意の「し」が添えられ、変わらない状態を強調している。
三句「さもらはば」は、様子をうかがっているならば、の意である。「さもらふ」は機会をうかがって待つことで、未然形に「ば」が付いた仮定の条件を表している。
四句「いづれの時か」は、いつの時に、の意である。係助詞「か」は疑問を表し、結句の連体形「む」で結ぶ係り結びとなっている。
結句「我が恋ひずあらむ」は、私が恋しく思わずにいられるだろうか、の意である。「む」は推量の助動詞で、四句の「か」を受けた結びである。字余りの句である。
ひとめ:他人の見る目
さもらふ:様子をうかがう、機会を待つ
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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玉桙の道行きぶりに思はぬに 妹を相見て恋ふるころかも
- 次の歌
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敷栲の衣手離れて我を待つと あるらむ子らは面影に見ゆ