ぬばたまの我が黒髪を引きぬらし
乱れてさらに恋ひわたるかも
- 歌の意味
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私の黒髪を解いて垂らし、その髪のように乱れて、さらにまた恋い続けることだ。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2610
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
結っていた黒髪を解いて垂らし、髪が乱れるように心も乱れて、なおも恋い続けていると詠んだ恋の歌である。黒髪を詠むことから女性の立場の歌とみられ、髪の乱れに心の乱れを重ねて、抑えきれない恋の思いを表している。
前の数首が袖や衣を通して恋を詠んだのに対し、本歌は黒髪という身体の姿を通して恋の乱れを詠んでいる。次歌の第二千六百十一首も紐が解けることを詠み、身につけたものや身の姿に恋の思いが表れる歌が続いている。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「ぬばたまの」は、黒、夜、髪などにかかる枕詞で、ここでは「黒髪」にかかる。ぬばたまはヒオウギの実で、黒く艶のあることから黒いものを導く。
二句「我が黒髪を」は、私の黒髪を、の意である。艶やかな黒髪は女性の美しさを象徴するものである。
三句「引きぬらし」は、結っていた髪を解いて垂らし、の意である。「ぬらす」は髪を解いて垂らす意の動詞で、身なりを整える余裕もない心の様子をうかがわせる。
四句「乱れてさらに」は、乱れて、さらにまた、の意である。「乱れ」は黒髪の乱れと心の乱れとを重ねた表現である。
結句「恋ひわたるかも」は、恋い続けることだ、の意である。「恋ひわたる」は長い間恋い続けることをいい、「かも」は詠嘆の終助詞で、思いの深さを嘆きとともに言い終えている。
ぬばたま:ヒオウギの実で、黒く丸い。「ぬばたまの」の形で黒、夜、髪などにかかる枕詞となる
ぬらす:結った髪を解いて垂らす
こひわたる:長い間恋い続ける
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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白栲の袖はまゆひぬ我妹子が 家のあたりをやまず振りしに
- 次の歌
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今さらに君が手枕まき寝めや 我が紐の緒の解けつつもとな