今さらに君が手枕まき寝めや
我が紐の緒の解けつつもとな
- 歌の意味
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今さら、あなたの手枕をして寝ることなどあるだろうか。それなのに私の衣の紐の緒が、むやみに解けてばかりいる。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2611
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
今となってはもう恋人の腕を枕に寝ることなどないだろうに、自分の衣の紐がしきりに解けると嘆いた恋の歌である。紐が自然に解けるのは恋人に逢える前兆とされており、逢えるはずもないのに兆しばかりが現れることへのいら立ちと、なお消えない期待とが込められている。
前歌の第二千六百十首が黒髪の乱れを詠んだのに続き、本歌は紐が解けることを詠んでいる。また本巻の第二千六百十三首の夕占、第二千六百十四首の眉根を掻くことと並んで、恋の兆しや占いを詠む歌がこのあたりに集まっている。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「今さらに」は、今となって改めて、の意である。もはや時機を失ったという思いを表している。
二句「君が手枕」は、あなたの腕の枕、の意である。共寝のときに恋人の腕を枕とすることをいう。
三句「まき寝めや」は、枕にして寝ることがあろうか、いやない、の意である。「まき」は枕にする意の動詞「まく」、「め」は推量の助動詞「む」の已然形で、「や」とともに反語を表す。ここで句切れとなる三句切れの歌である。
四句「我が紐の緒の」は、私の衣の紐の、の意である。紐が解けるのは恋人に逢える兆し、あるいは相手が自分を思っているしるしとされた。
結句「解けつつもとな」は、むやみに解けてばかりいる、の意である。「つつ」は反復を表し、「もとな」はわけもなく、しきりに、の意の副詞で、兆しばかりが空しく現れることへの不満を表している。
たまくら:腕を枕とすること、またその腕
まく:枕にする
ひも:衣を結び合わせるための紐
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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ぬばたまの我が黒髪を引きぬらし 乱れてさらに恋ひわたるかも
- 次の歌
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白栲の袖触れてし夜我が背子に 我が恋ふらくはやむ時もなし