眉根掻き下いふかしみ思へりし
妹が姿を今日見つるかも
- 歌の意味
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眉を掻いて、心の中で気がかりに思っていた妻の姿を、今日見たことだ。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2614
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
眉を掻きながら、どうしているかと心の中で気にかけていた恋人の姿を、今日ようやく見ることができたと喜んだ恋の歌である。眉がかゆいのは思う人に逢える前兆とされ、その兆しがかなった喜びを、「今日」という語ではっきりと示している。
本歌は第二千六百十四首の左注に「一書歌曰」として記された別伝の歌である。初句から二句は本歌と同じであるが、三句を「思へりし」として四句の「妹」にかけ、下の句を「妹が姿を今日見つるかも」としている。本歌の「いにしへ人」に対して相手を「妹」と呼び、男性の立場の歌となっている点は、或本歌と同じである。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「眉根掻き」は、眉を掻いて、の意である。眉がかゆいのは恋しい人に逢える兆しとされ、本歌と同じ句で歌い起こしている。
二句「下いふかしみ」は、心の中で気がかりに思って、の意である。「下」は心の内、「いふかしみ」は形容詞「いふかし」の語幹に接尾語「み」が付いた形で、本歌と同じ句である。
三句「思へりし」は、思っていた、の意である。「り」は存続の助動詞、「し」は過去の助動詞「き」の連体形で、四句の「妹」を修飾する。本歌の「思へるに」と異なり、次の句へ連体修飾で続けている。
四句「妹が姿を」は、妻の姿を、の意である。心にかけていた恋人その人の姿をいう。
結句「今日見つるかも」は、今日見たことだ、の意である。「つる」は完了の助動詞「つ」の連体形、「かも」は詠嘆の終助詞で、待ち望んだ日が今日であったという喜びを表している。
まよね:眉、また眉のあたり
いも:男性が恋人や妻を親しんで呼ぶ語
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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眉根掻き誰をか見むと思ひつつ 日長く恋ひし妹に逢へるかも
- 次の歌
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敷栲の枕をまきて妹と我れと 寝る夜はなくて年ぞ経にける