敷栲の枕をまきて妹と我れと
寝る夜はなくて年ぞ経にける
- 歌の意味
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枕をして妻と私とが共に寝る夜はないまま、年が過ぎてしまった。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2615
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
恋人と枕を並べて共に寝る夜もないまま、年月が過ぎてしまったと嘆いた恋の歌である。逢えない恋の長さを一夜一夜ではなく年という尺度で振り返り、積み重なった歳月の重さに恋のつらさを込めている。
初句「敷栲の」は本巻の第二千六百七首と同じであり、二句の「まきて」は第二千六百十一首の「手枕まき寝めや」と同じく、共寝の枕を詠む語である。前歌の第二千六百十四首とその別伝が久しく恋した人に逢えた喜びを詠んだのに対し、本歌は逢えないまま年を経た嘆きを詠んでおり、対照的な配列となっている。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「敷栲の」は、枕、衣、袖などにかかる枕詞で、ここでは二句の「枕」にかかる。
二句「枕をまきて」は、枕をして、の意である。「まき」は枕にする意の動詞「まく」で、共寝の床を思わせる句である。
三句「妹と我れと」は、妻と私とが、の意である。六音の字余りの句で、二人を並べて挙げることで共寝の姿を描いている。
四句「寝る夜はなくて」は、共に寝る夜はなくて、の意である。係助詞「は」で取り立て、共寝の夜が一夜もなかったことを強めている。
結句「年ぞ経にける」は、年が過ぎてしまった、の意である。係助詞「ぞ」を受けて詠嘆の助動詞「けり」の連体形「ける」で結ぶ係り結びとなっており、完了の「に」とともに、気がつけば年が経っていたという嘆きを表している。
しきたへ:寝床に敷く栲の布。「しきたへの」の形で枕、衣、袖などにかかる枕詞となる
まく:枕にする
ぬ:寝る
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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眉根掻き下いふかしみ思へりし 妹が姿を今日見つるかも
- 次の歌
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奥山の真木の板戸を音早み 妹があたりの霜の上に寝ぬ