月夜よみ妹に逢はむと直道から
我れは来つれど夜ぞ更けにける
- 歌の意味
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月夜がよいので妻に逢おうと、まっすぐな道を通って私は来たけれど、夜は更けてしまった。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2618
詞書は前の歌に続き「正に心緒を述ぶ」
月の明るい夜なので恋人に逢おうと、近道を通って急いで来たけれど、着いたときには夜が更けてしまっていたと詠んだ恋の歌である。逢いたい一心で急いだ男の思いと、それでも遅くなってしまった無念さとが、平明な言葉で述べられている。
本歌は「正に心緒を述ぶ」の部立の最後の歌であり、次歌からは「物に寄せて思ひを陳ぶ」の歌が始まる。前歌の第二千六百十七首で女が「誰れか留むる」と来ない恋人を嘆いたのを受け、急いで来たが夜が更けたと詠む本歌が置かれており、問いに応じるかのような配列となっている。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「月夜よみ」は、月夜がよいので、の意である。「月夜」は月の明るい夜、「よみ」は形容詞「よし」の語幹に接尾語「み」が付いたミ語法で、理由を表す。明るい月が恋人のもとへ通う道を照らしたことをいう。
二句「妹に逢はむと」は、恋人に逢おうと、の意である。「む」は意志の助動詞、「と」は引用の格助詞で、男の心づもりを示している。
三句「直道から」は、まっすぐな近道を通って、の意である。「から」は経由を表す格助詞で、少しでも早く着こうと急いだ様子が表れている。
四句「我れは来つれど」は、私は来たけれど、の意である。「つれ」は完了の助動詞「つ」の已然形、「ど」は逆接の接続助詞で、急いで来た甲斐がなかったことへと転じている。
結句「夜ぞ更けにける」は、夜が更けてしまった、の意である。係助詞「ぞ」を受けて詠嘆の助動詞「けり」の連体形「ける」で結ぶ係り結びとなっており、遅くなってしまった無念さを表している。
つくよ:月、また月の明るい夜
ただち:まっすぐな道、近道
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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あしひきの山桜戸を開け置きて 我が待つ君を誰れか留むる
- 次の歌
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朝影に我が身はなりぬ韓衣 裾のあはずて久しくなれば