朝影に我が身はなりぬ韓衣
裾のあはずて久しくなれば
- 歌の意味
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朝の影のように私の身はやせ細ってしまった。韓衣の裾が合わないように、あなたに逢わないで久しくなるので。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2619
詞書「物に寄せて思ひを陳ぶ」
恋人に逢わないまま久しくなったので、朝日に映る細く薄い影のように身がやせ細ってしまったと嘆いた恋の歌である。逢えない恋のつらさを、やせ衰えた身の姿と、前で合わない韓衣の裾という具体的な物によって表している。
詞書の「物に寄せて思ひを陳ぶ」は、衣や自然の景物などの物にことよせて恋の思いを述べる歌を集めた部立であり、本歌はその最初の歌である。本歌では韓衣の裾が合わないことに、恋人に逢わないことを重ねている。次歌の第二千六百二十首以下にも、解き衣、摺り衣、塩焼き衣、紅の衣と、衣に寄せる歌が続いている。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「朝影に」は、朝の影のように、の意である。朝日によってできる細長く薄い影をいい、恋にやつれてやせ細った身の喩えである。
二句「我が身はなりぬ」は、私の身はなってしまった、の意である。「ぬ」は完了の助動詞で、ここで句切れとなる二句切れの歌である。理由を後に述べる倒置の形となっている。
三句「韓衣」は、大陸風の衣の意である。韓衣は裾が前で合わない仕立てであったとされ、三句から四句の「裾の」までが、「あはず」を導く序詞となっている。
四句「裾のあはずて」は、裾が合わないように逢わないで、の意である。「あはず」は裾が合わない意と恋人に逢わない意とを掛ける掛詞で、「ずて」は打消の「ず」に接続助詞「て」が付いた形である。
結句「久しくなれば」は、久しくなるので、の意である。「ば」は已然形に付いて理由を表す接続助詞で、二句でやせ細ったと述べたことの理由を後から示している。
あさかげ:朝日によってできる細長く薄い影
からころも:大陸風の衣服。裾が前で合わない仕立てであったとされる
あふ:衣の裾が合う意と、恋人に逢う意を掛ける
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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月夜よみ妹に逢はむと直道から 我れは来つれど夜ぞ更けにける
- 次の歌
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解き衣の思ひ乱れて恋ふれども なぞ汝がゆゑと問ふ人もなき