解き衣の思ひ乱れて恋ふれども
なぞ汝がゆゑと問ふ人もなき
- 歌の意味
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縫い目を解いた衣のように思い乱れて恋い慕っているけれども、「どうしてなのか、おまえのそのわけは」と問う人もいない。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2620
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
縫い目を解いてばらばらになった衣のように、思い乱れて恋い慕っているのに、そのわけを尋ねてくれる人さえいないと嘆いた恋の歌である。人に打ち明けることもできず、気づいてももらえない忍ぶ恋の孤独が表れている。
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」であり、本歌は解き衣に寄せて乱れる恋心を述べている。前歌の第二千六百十九首の韓衣に続いて衣に寄せる歌であり、次歌の第二千六百二十一首の摺り衣、第二千六百二十二首の塩焼き衣へと、衣を詠む歌が並んでいる。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「解き衣の」は、縫い糸を解いてばらばらにした衣の意で、乱れるさまから「乱る」にかかる枕詞である。衣に寄せる歌としての物にあたる語である。
二句「思ひ乱れて」は、あれこれと思い乱れて、の意である。初句の枕詞を受け、心がまとまらず千々に乱れるさまをいう。
三句「恋ふれども」は、恋い慕っているけれども、の意である。「ども」は逆接の接続助詞で、下の句の、誰も問うてくれないという嘆きへとつないでいる。
四句「なぞ汝がゆゑと」は、なぜなのか、おまえのそのわけは、と問いかける言葉を引いたものである。「汝」は問いかける人から見た作者を指し、「と」は引用の格助詞である。
結句「問ふ人もなき」は、問う人もいない、の意である。形容詞「なし」の連体形「なき」で言いさして結ぶ連体止めで、余情を込めた詠嘆となっている。
とききぬ:縫い糸を解いた衣。「とききぬの」の形で「乱る」にかかる枕詞となる
な:おまえ。相手を親しんで、または目下の者に対して呼ぶ語
ゆゑ:わけ、理由
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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朝影に我が身はなりぬ韓衣 裾のあはずて久しくなれば
- 次の歌
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摺り衣着りと夢に見つうつつには いづれの人の言か繁けむ