逢はなくに夕占を問ふと幣に置くに
我が衣手はまたぞ継ぐべき
- 歌の意味
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逢えないので、夕占を問おうとして幣として供えるので、私の着物の袖はまた継ぎ足さなければならないだろう。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2625
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
恋人に逢えないので、夕占をしては袖を幣として神に手向けるため、自分の着物の袖はまた継ぎ足さなければならないと嘆いた歌である。何度も占いに頼らずにはいられない恋の切なさを、短くなっていく袖という具体的な物によって、ややおどけた調子で言い表している。
詞書の「物に寄せて思ひを陳ぶ」は、身のまわりの物に託して恋の思いを述べる歌を集めた部立である。本歌は衣の袖に寄せた一首で、前歌の紅の深染めの衣、次歌の古衣と、このあたりには衣に寄せた恋の歌が続いている。夕占は夕方の辻に立ち、行き交う人の言葉を聞いて吉凶を占うもので、万葉集の恋の歌にしばしば詠まれる習俗である。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「逢はなくに」逢わないのに、の意である。「なくに」は打消の助動詞「ず」のク語法に助詞「に」が付いた形で、ここでは逢えない状況を理由として示している。
二句「夕占を問ふと」夕占で吉凶を問おうとして、の意である。恋人が来るかどうかを夕占に尋ねる心をいう。
三句「幣に置くに」幣として供えるので、の意である。神に手向ける幣として、自分の袖を切って置くことをいうと解されている。
四句「我が衣手は」私の衣の袖は、の意である。係助詞「は」で、幣に用いて短くなった袖を取り立てている。
結句「またぞ継ぐべき」またも継ぎ足さねばならないだろう、の意である。係助詞「ぞ」を受けて当然の助動詞「べし」が連体形「べき」で結ぶ係り結びで、たび重なる占いを苦笑まじりに言い終えている。
ゆふけ:夕方、辻に立って道行く人の言葉を聞き、吉凶を占うこと
ぬさ:神に祈るときに供える物。布や紙などを用いた
ころもで:衣の袖
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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紅の深染めの衣色深く 染みにしかばか忘れかねつる
- 次の歌
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古衣打棄つる人は秋風の 立ちくる時に物思ふものぞ