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いにしへの倭文機帯を結び垂れ
誰れといふ人も君にはまさじ

歌の意味
古風な倭文織の帯を結んで垂らす、その「垂れ」ではないが、誰という人も、あなたにまさりはしないだろう。
鑑賞
巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2628

詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
 古風な倭文織の帯を結んで垂らすという序から、「誰れといふ人も」を導き、どんな人もあなたにはまさらないと、恋人への一途な思いを述べた歌である。帯という身につける物に寄せて、相手をこの上ない人として称えている。
 上三句は序詞で、「結び垂れ」の「垂れ」から同音の「誰れ」を導いている。日本古来の織物である倭文の帯を持ち出すことで、古くから変わらぬ確かさを思わせ、相手を思う心の揺るぎなさを添えている。前歌に続き、衣にかかわる物に寄せた恋の歌である。
 なお左注には「一書の歌に曰く」として、二句を「狭織の帯を」、四句を「誰れしの人も」とする別伝の歌が記されている。
 作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。

 初句「いにしへの」古い時代の、の意である。昔から伝わる古風な、という気持ちで次の「倭文機帯」にかかる。
 二句「倭文機帯を」倭文織の帯を、の意である。倭文は日本古来の織物で、縞や乱れ模様を織り出した布をいう。
 三句「結び垂れ」結んで垂らし、の意である。初句からここまでが序詞で、「垂れ」の音を繰り返して次の「誰れ」を導いている。
 四句「誰れといふ人も」誰という人も、の意である。どのような人であっても、と打ち消しを予想して広く人を挙げている。八音の字余りの句である。
 結句「君にはまさじ」あなたにはまさるまい、の意である。「まさじ」は動詞「まさる」に打消推量の助動詞「じ」が付いた形で、どの人もあなたには及ばないと断言して歌を結んでいる。

しつはた:倭文織の布。日本古来の織物で、縞や乱れ模様を織り出したもの
まさる:他よりすぐれる、上回る
出典
万葉集
前の歌
はねかづら今する妹がうら若み 笑みみ怒りみ付けし紐解く
次の歌
いにしへの狭織の帯を結び垂れ 誰れしの人も君にはまさじ