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逢はずとも我れは恨みじこの枕
我れと思ひてまきてさ寝ませ

歌の意味
逢ってくださらなくても、私は恨むまい。この枕を私だと思って、枕にしておやすみなさい。
鑑賞
巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2629

詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
 逢ってくれなくても恨みはしない、この枕を私だと思って共寝してほしいと、恋人に語りかけた女の歌である。逢えない寂しさを責めることなく、自分の代わりとして枕を託す、控えめで情の深い心が表れている。
 枕という寝所の物に寄せた一首で、ここから次歌の木枕、その次の歌の手枕と、枕に寄せた恋の歌が続く。枕を自分の身代わりとして相手に託すという趣向に、共寝を願う思いが込められている。
 作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。

 初句「逢はずとも」逢わなくても、の意である。接続助詞「とも」は逆接の仮定条件を表し、逢えない場合を仮に置いている。
 二句「我れは恨みじ」私は恨むまい、の意である。打消意志の助動詞「じ」で、相手を責めまいとする決意を示し、ここで句切れとなる。
 三句「この枕」この枕、の意である。指示語「この」で、相手に託す手もとの枕を示している。
 四句「我れと思ひて」私だと思って、の意である。枕を自分の身代わりとして見てほしいという願いを述べている。
 結句「まきてさ寝ませ」枕にしておやすみください、の意である。「まく」は枕にする、共寝する意で、「さ寝」の「さ」は接頭語、「ませ」は尊敬の助動詞「ます」の命令形である。

まく:枕にする、また共寝する
さぬ:寝る。「さ」は接頭語
出典
万葉集
前の歌
いにしへの狭織の帯を結び垂れ 誰れしの人も君にはまさじ
次の歌
結へる紐解かむ日遠み敷栲の 我が木枕は苔生しにけり