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結へる紐解かむ日遠み敷栲の
我が木枕は苔生しにけり

歌の意味
結んだ紐を解く日が遠いので、私の木枕は苔が生えてしまった。
鑑賞
巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2630

詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
 結び合った紐を解いて共寝する日が遠いので、自分の木枕には苔が生えてしまったと、長く独り寝を続ける寂しさを訴えた歌である。使われないまま置かれた枕に苔が生えたという大胆な誇張によって、待つ時間の長さを印象深く言い表している。
 前歌に続いて枕に寄せた一首である。前歌が逢えなくても枕を身代わりに共寝してほしいと願うのに対し、本歌は共寝のないまま時が過ぎ、枕が苔むしてしまったと嘆いており、同じ枕を通して待つ側の思いを別の角度から詠んでいる。
 作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。

 初句「結へる紐」結んだ紐、の意である。別れの際に互いに結び合った衣の紐をいい、再び逢う日まで解かないものとされた。
 二句「解かむ日遠み」解く日が遠いので、の意である。「遠み」は形容詞「遠し」の語幹に接尾語「み」が付いたミ語法で、理由を表している。再び逢って紐を解く日がまだ遠いことをいう。
 三句「敷栲の」「枕」にかかる枕詞である。「敷栲」は寝床に敷く布をいい、寝具にかかわる語にかかる。
 四句「我が木枕は」私の木枕は、の意である。木で作った枕で、係助詞「は」によって取り立てている。
 結句「苔生しにけり」苔が生えてしまったことだ、の意である。完了の助動詞「ぬ」の連用形「に」に詠嘆の助動詞「けり」が付き、使われない枕に苔が生えたという誇張に驚きと嘆きを込めている。

しきたへ:寝床に敷く布。「しきたへの」は「枕」「衣」「床」などにかかる枕詞
こまくら:木で作った枕
こけむす:苔が生える
出典
万葉集
前の歌
逢はずとも我れは恨みじこの枕 我れと思ひてまきてさ寝ませ
次の歌
ぬばたまの黒髪敷きて長き夜を 手枕の上に妹待つらむか