剣大刀身に佩き添ふる大夫や
恋といふものを忍びかねてむ
- 歌の意味
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剣や大刀を身に帯びている立派な男子が、恋というものをこらえきれないでいるのだろうか。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2635
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
剣や大刀を身に帯びた立派な男子である自分が、恋というものをこらえきれないでいるのだろうかと、恋に弱る自分を省みた歌である。武具を身につけた勇ましい大夫の姿と、恋の前にはなすすべもない心とを対比させ、恋の力の大きさを言い表している。
剣大刀に寄せた一首で、ここから次歌、その次の歌と、「剣大刀」を詠み込んだ歌が三首続く。大夫でありながら恋に堪えかねると嘆く趣向は万葉集の恋の歌にしばしば見られ、男子の面目と恋心との葛藤を詠む型の一つとなっている。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「剣大刀」剣と大刀の意である。ここでは実際に身に帯びる武具として詠まれ、「身」に続けている。
二句「身に佩き添ふる」身に帯び添えている、の意である。「佩く」は刀などを腰に帯びることで、武具を身につけた男子の姿を描いている。
三句「大夫や」立派な男子が、の意である。係助詞「や」は疑問を表し、結句の「む」と呼応している。
四句「恋といふものを」恋というものを、の意である。恋をあらためて一つの物として取り上げ、その手ごわさを示している。八音の字余りの句である。
結句「忍びかねてむ」こらえきれないでいるのだろうか、の意である。「忍びかぬ」はこらえきれない意で、完了の助動詞「つ」の未然形「て」に推量の助動詞「む」が連体形で付き、係助詞「や」を受けて結ぶ係り結びとなっている。
つるぎたち:剣と大刀。「身に添ふ」「とぐ」などにかかる枕詞ともなる
はく:刀などを腰に帯びる
ますらを:勇ましく立派な男子
しのぶ:こらえる、我慢する
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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里遠み恋わびにけりまそ鏡 面影去らず夢に見えこそ
- 次の歌
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剣大刀諸刃の上に行き触れて 死にかもしなむ恋ひつつあらずは