剣大刀諸刃の上に行き触れて
死にかもしなむ恋ひつつあらずは
- 歌の意味
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剣大刀の諸刃の上に行き触れて、いっそ死んでしまおうか。こうして恋い続けているよりは。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2636
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
こうして苦しい恋を続けているよりは、いっそ剣大刀の両刃の上に身を触れて死んでしまおうかと、恋の苦しさの極まりを詠んだ歌である。鋭い刃の上に身を投げ出すという激しい言い方によって、もはや耐えがたい恋の思いを訴えている。
前歌に続き剣大刀に寄せた一首である。前歌が大夫として恋に堪えかねる自分を省みるのに対し、本歌は死を口にするほどに思いを募らせている。「恋ひつつあらずは」の結句は、巻第二の第八十六首、磐姫皇后の「かくばかり恋ひつつあらずは」の歌にも見える言い方で、本巻の第二千六百四十六首も同じ結句を持っている。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「剣大刀」剣と大刀の意で、ここでは両刃の剣をいい、次の「諸刃」に続けている。
二句「諸刃の上に」両刃の上に、の意である。「諸刃」は刀剣の両側に刃のあることをいう。
三句「行き触れて」行って触れて、の意である。鋭い刃の上にわが身を触れさせることをいう。
四句「死にかもしなむ」死んでしまおうか、の意である。係助詞「かも」を受けて、完了の助動詞「ぬ」の未然形「な」に意志の助動詞「む」が連体形で付いて結ぶ係り結びで、ここで句切れとなる。
結句「恋ひつつあらずは」恋い続けているよりは、の意である。「ずは」は、〜するよりはの意を表す万葉集特有の言い方で、四句と倒置の関係にある。字余りの句である。
もろは:刀剣の両側に刃があること
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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剣大刀身に佩き添ふる大夫や 恋といふものを忍びかねてむ
- 次の歌
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うち鼻ひ鼻をぞひつる剣大刀 身に添ふ妹し思ひけらしも