うち鼻ひ鼻をぞひつる剣大刀
身に添ふ妹し思ひけらしも
- 歌の意味
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くしゃみをした。くしゃみが出たのだ。剣大刀のように身に寄り添って寝る妹が、私を思ってくれているらしい。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2637
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
くしゃみが出たのは、いつも身に寄り添う恋人が自分を思っているからに違いないと喜んだ歌である。くしゃみは人に思われているしるし、また恋人に逢える前触れとする古い俗信をふまえ、離れている恋人の心を感じ取ろうとしている。
前二首に続き「剣大刀」を詠み込んだ一首である。前二首が恋の苦しさを嘆くのに対し、本歌はくしゃみをきっかけに相手の思いを知る明るい調子となっており、同じ剣大刀を通して恋の別の面を詠んでいる。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「うち鼻ひ」くしゃみをして、の意である。「うち」は接頭語で、「鼻ひ」はくしゃみをする意の動詞である。
二句「鼻をぞひつる」くしゃみをしたことだ、の意である。初句と同じことを重ねて言い、くしゃみが出たことを強調している。係助詞「ぞ」を受けて完了の助動詞「つ」の連体形「つる」で結ぶ係り結びで、ここで句切れとなる。
三句「剣大刀」剣大刀は身に添えて帯びるものであることから、「身に添ふ」にかかる枕詞である。
四句「身に添ふ妹し」身に寄り添う妹が、の意である。共寝をする恋人をいい、強意の助詞「し」で強めている。
結句「思ひけらしも」私を思っているらしい、の意である。過去の助動詞「けり」と推量の助動詞「らし」の約まった「けらし」に、詠嘆の終助詞「も」が付き、根拠をもって推し量る心を表している。
はなひる:くしゃみをする。くしゃみは人に思われているしるしとされた
つるぎたち:剣と大刀。「身に添ふ」「とぐ」などにかかる枕詞ともなる
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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剣大刀諸刃の上に行き触れて 死にかもしなむ恋ひつつあらずは
- 次の歌
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梓弓末のはら野に鳥狩する 君が弓弦の絶えむと思へや