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梓弓末のはら野に鳥狩する
君が弓弦の絶えむと思へや

歌の意味
末の原野で鳥狩をするあなたの弓弦が切れるように、二人の仲が絶えようなどと思うだろうか。思いはしない。
鑑賞
巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2638

詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
 末の原野で鳥狩をするあなたの弓の弦が切れるように、二人の仲が絶えるなどとは思いもしないと、恋人との仲の確かさを信じる心を詠んだ歌である。狩をする男の勇ましい姿を描きながら、その弓弦に寄せて変わらぬ仲を誓っている。
 弓に寄せた一首で、ここから次歌、その次の歌と、弓にかかわる歌が三首続く。前三首の剣大刀に続いて武具に寄せる歌が並んでおり、男の身近な道具を通して恋を詠む配列となっている。
 作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。

 初句「梓弓」弓の上端を「末」ということから、「末」にかかる枕詞である。「梓弓」は梓の木で作った弓をいう。
 二句「末のはら野に」末の原野に、の意である。「末」は地名で、和泉国の陶邑の地、今の大阪府堺市あたりとする説がある。
 三句「鳥狩する」鳥狩をする、の意である。鷹などを使って鳥を捕る狩をいう。
 四句「君が弓弦の」あなたの弓の弦が、の意である。初句からここまでが序詞で、弓弦が切れることから次の「絶え」を導いている。「弓弦」と「絶ゆ」は縁語の関係にある。
 結句「絶えむと思へや」絶えようと思うだろうか、いや思いはしない、の意である。「思へや」は已然形に係助詞「や」が付いた反語で、二人の仲が絶えることはないと強く言い切っている。

あづさゆみ:梓の木で作った弓。「引く」「末」「張る」などにかかる枕詞
とがり:鷹などを使って鳥を捕る狩
ゆづる:弓のつる
出典
万葉集
前の歌
うち鼻ひ鼻をぞひつる剣大刀 身に添ふ妹し思ひけらしも
次の歌
葛城の襲津彦真弓新木にも 頼めや君が我が名告りけむ