燈火の影にかがよふうつせみの
妹が笑まひし面影に見ゆ
- 歌の意味
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ともしびの光の中できらめいていた、生身の妹の笑顔が、面影に見える。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2642
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
ともしびの光に照らされてきらめいていた、生身の恋人の笑顔が、今も面影に浮かんで見えると詠んだ歌である。灯火の揺らめく光と恋人の笑みとを重ね、逢瀬の夜の記憶を美しく印象深く描き出している。
燈火に寄せた一首である。暗い夜の中で灯火に浮かび上がる笑顔という光と影の対比が鮮やかで、恋人の姿を視覚的にとらえた歌として評価が高い。本巻の第二千六百三十四首など、恋人の面影を詠む歌は巻第十一に多いが、本歌は面影の具体的な姿を灯火の光とともに描いている。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「燈火の」ともしびの、の意である。夜の室内を照らす灯火をいう。
二句「影にかがよふ」光の中できらきらと揺れ輝く、の意である。「影」は光をいい、「かがよふ」は光がきらきらと揺れて輝くことをいう。
三句「うつせみの」現実に生きている、の意である。「うつせみ」はこの世に生きている身をいい、夢や幻ではない生身の恋人の姿を示している。
四句「妹が笑まひし」妹の笑顔が、の意である。「笑まひ」はほほえみ、笑顔のことで、「し」は強意の助詞である。
結句「面影に見ゆ」面影に見える、の意である。目の前にいない恋人の姿がありありと心に浮かぶことをいい、動詞「見ゆ」で歌を結んでいる。
かがよふ:きらきらと揺れて光る
うつせみ:この世に生きている身、現実の人
ゑまひ:ほほえみ、笑顔
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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時守の打ち鳴す鼓数みみれば 時にはなりぬ逢はなくもあやし
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玉桙の道行き疲れ稲席 しきても君を見むよしもがも