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宮材引く泉の杣に立つ民の
やむ時もなく恋ひわたるかも

歌の意味
宮殿の用材を切り出して引く泉の杣山で働く民が休む時もないように、やむ時もなく私は恋い続けることだ。
鑑賞
巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2645

詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
 宮殿を造る材木を切り出す泉の杣山で、人々が休む間もなく働くように、絶え間なく恋い続けていると嘆いた歌である。宮造りの労役という大がかりな営みに寄せて、休みなく続く恋の苦しさを言い表している。
 上三句は「やむ時もなく」を導く序詞であり、杣山の民の休みない労働を、休む時のない恋の比喩としている。巻第一の第五十首、藤原宮の役民の作る歌にも、宮の用材を泉の川に浮かべて運ぶさまが詠まれており、本歌の序もそうした都造りの光景を背景にしたものと考えられる。前歌の橋に続き、人々の労働にかかわる物に寄せた一首である。
 作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。

 初句「宮材引く」は、宮殿の用材を切り出して運ぶの意である。「宮材」は宮殿を建てるための木材をいう。
 二句「泉の杣に」は、泉川(今の木津川)の流域にあった杣山をいう。「杣」は材木を切り出す山のことで、京都府南部の地とされる。
 三句「立つ民の」は、杣山で立ち働く民の、の意である。ここまでの三句が序詞となり、次の「やむ時もなく」を導いている。
 四句「やむ時もなく」は、止む時もなくの意で、序の民の休みない労働と、作者の絶え間ない恋とをつなぐ句である。
 結句「恋ひわたるかも」は、恋い続けることだの意である。「わたる」は時を経て続ける意を添え、終助詞「かも」が詠嘆を表している。

みやぎ:宮殿を造るための木材
そま:材木を切り出す山、杣山
こひわたる:長い間恋い続ける
出典
万葉集
前の歌
小治田の板田の橋の壊れなば 桁より行かむな恋ひそ我妹
次の歌
住吉の津守網引のうけの緒の 浮かれか行かむ恋ひつつあらずは