手作りを空ゆ引き越し遠みこそ
目言離るらめ絶ゆと隔てや
- 歌の意味
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手織りの布を空を通して遠く引き渡すように、遠いからこそ逢うことも語ることも途絶えているのだろう。仲が絶えたといって隔てを置いているのだろうか、そうではない。
- 鑑賞
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巻第十一 古今相聞往来歌類之上 2647
詞書は前の歌に続き「物に寄せて思ひを陳ぶ」
逢うことも言葉を交わすことも途絶えているのは、ただ住まいが遠いからであって、仲が絶えたと思って隔てを置いているのではないと、相手に訴えた歌である。疎遠になった事情を距離のせいとし、心変わりではないことを伝えようとしている。
上二句は「遠み」を導く序詞で、手織りの布を空中に長く引き渡すさまを、遠く隔たったことの比喩としたものとされるが、その具体的な情景については諸説ある。前歌までの網の浮きの緒に続き、布という手仕事の品に寄せた一首である。
作者は未詳である。巻第十一の作者未詳歌は、名を伝えない人々の恋の歌を集めたものである。
初句「手作りを」は、手で織った布をの意である。原文では「東細布」と書かれ、東国産の細やかな布を指すとみられる。
二句「空ゆ引き越し」は、空を通して引き渡しての意である。「ゆ」は経由する所を示す助詞で、ここまでの二句が序詞となって「遠み」を導いている。
三句「遠みこそ」は、遠いのでの意である。「み」は形容詞の語幹に付いて原因や理由を表す接尾語で、係助詞「こそ」が四句の「らめ」と係り結びをなしている。
四句「目言離るらめ」は、逢うことも言葉を交わすことも遠ざかっているのだろうの意である。現在推量の助動詞「らむ」の已然形「らめ」で、三句の「こそ」を受けて結んでいる。
結句「絶ゆと隔てや」は、仲が絶えたといって隔てを置いているだろうか、いやそうではないの意である。係助詞「や」による反語で、心変わりを強く打ち消している。
てづくり:手で織った布
めこと:目で見ることと言葉を交わすこと、逢って語らうこと
かる:遠ざかる、疎遠になる
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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住吉の津守網引のうけの緒の 浮かれか行かむ恋ひつつあらずは
- 次の歌
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かにかくに物は思はじ飛騨人の 打つ墨縄のただ一道に